VPPとは、電力を使用する需要家、小規模な再生可能エネルギーの発電所、蓄電池、燃料電池などの分散型エネルギーリソース(DER)を集めたポートフォリオのことで、それらをIoTを活用して統合的に制御することで、あたかも実在する1つの発電所のように機能させるシステムです。仮想発電所ともいいます。 VPPは従来の大規模集中型発電所と同じように機能し、同じ効果があり、最終的な目的は同じです。電力の需要と供給を一致させ、送電網が安定した状態を維持できるようにすることです。
バーチャルパワープラント(VPP)とは?
従来の発電所は物理的に 1 か所で稼働しており、供給側でのみ機能します。需要が増加すると、より多くの電力を供給するために発電所の発電量を一時的に焚き増したり、普段は動いていない別の発電所を稼働させたりするなどの対応をして需要を満たします。
対照的に、VPPはDERをIoT機器を活用してさまざまな方法で制御し、需要を供給に合わせやすくします。需要を減少させることは、需給バランスの面では従来の発電所が供給を増加させることと同じ効果があります。
しかし、VPP ができることはこれだけではありません。VPP内のDER の一部(自家発電機、蓄電池など)は、送電網に電力を供給することもできます 。今はまだ一般的ではありませんが、将来的には増加すると考えられています。
VPPが拡大しているのは、DERによって需要家がより多くの再生可能エネルギーを取り入れ、電力の消費方法をより最適化し、脱炭素の目標を推進し、事業全体のレジリエンスを高めることができるからです。
需要に見合った供給ができるよう、さまざまな資産を活用
VPPには、多種多様なエネルギー資産を統合することができます。主な例としては、次のものが挙げられます。
1. 需要側フレキシビリティ(注1):電力の供給に合わせて電力需要(消費)を管理することを指します。最も一般的な需要側フレキシビリティは、電力会社や市場運営者のデマンドレスポンスプログラムを通じてインセンティブを受け取れる、需要抑制です。このプログラムでは、大口の電力を使用している需要家がシステムのピーク時間帯に需要を抑制することに対して報酬が支払われます。
オーストラリアにおけるEchuca Regional Health病院の事例は、これにあたります。
2. 蓄電池:蓄電池ソリューションは、需要家が、電気料金の安い時間帯に貯めたエネルギーや再生可能エネルギーによって貯めたエネルギーを利用することを可能にします。蓄電池がVPPの一部として直接送電網に電力を供給することもあります。
3. オンサイトの太陽光発電:オンサイト太陽光発電は、送電網からの電力購入量を削減する効果があります。契約プログラムによっては、太陽光の余剰電力を送電網に戻すことが可能です。
4. 電気自動車:蓄電池同様、スマートEV充電は送電網からのシグナルに反応し、充電時間を電気料金の高い時間帯から安い時間帯にシフトすることなどができます。エネルエックス・台湾でのGogoro社事例は、これにあたります。
(注1):電力業界でフレキシビリティとは、需要と供給の状況の変化に応じて発電、消費、送電網の運用を調整し、適応させる能力を指します。これには、電力需要の変動に対処するだけでなく、再生可能エネルギー源の統合に伴う変動性と不確実性の管理も含まれます。
VPPのメリット
DERを最適活用することで、VPPは従来の集中型発電所モデルよりも多くのメリットを提供することができます。代替となる火力発電所は運転コストが高いことが多いからです。さらに、送電網運営者は、需要がピークに達したときにすぐに起動できるよう、これらの集中型発電所を維持するために多額の費用を費やしています。
一方、VPPにおけるDERは、限界費用がはるかに低く、オンサイト太陽光発電、蓄電池、制御可能なフレキシビリティなど、一般的にはるかにクリーンなエネルギーを使用しています。
VPPの進化
電力を取り巻く環境は急速に進化しています。まだまだ先の話だと言われていたことが、今ではあたり前になりました:再生可能エネルギー資源が化石燃料を使用した発電設備とコストでの競争力を持つようになり、スマート家電や自動車は価格シグナルに素早く反応できるようになりました。
しかし、このような変化により、需要と供給のバランスを維持することがより複雑になってきています。例えば、風力発電や太陽光発電は断続的な資源(つまり、太陽光や風がなければ電力は供給されない)で、その普及が進むにつれ、断続的な発電の多い時と少ない時の橋渡しをするために必要な調整力(またはフレキシビリティ)の課題や容量が浮き彫りになってきています。
例えば、カリフォルニアのダックカーブ(左の図)で見られるように、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い時間ごとの電気の使われ方が変わり、ダックの首の部分(夕方の時刻帯)は需要が急激に高くなり、需要と供給のバランスが崩れやすくなります。これはカリフォルニアだけに見られる現象ではなく、日本でもさまざまなエリアで起きるようになってきています。世界的にも太陽光発電の導入がすすんでいる九州エリアをはじめ、日本全国で対策が必要となりつつあります。
ここで、フレキシビリティや蓄電池などの需要家側エネルギーリソースの出番になるのです。
「VPPを最適活用して電力の需給バランスを取ることは、今後ますます増加する傾向にあります。」
近藤 広大
VPPは、企業にとって多くのメリットがあります。
エネルエックスはDER、さまざまなデマンドレスポンスのプログラム、太陽光発電、蓄電池などをVPPに統合した経験が豊富で、貴重な収入源を生み出します。デマンドレスポンスへの参加方法についてはこちらをご覧ください。
エネルエックスはエネルギー最大手のエネルの子会社として創立され、世界各国での経験とノウハウを豊富に保有しています。エネルエックス・ジャパンは2012年から日本でデマンドレスポンスサービスを提供している、独立系のアグリゲーターです。経験豊富な当社の専門家が、デマンドレスポンスからの収益最大化をはかれるよう、お客様の業種・ご要望に合わせて分析し、カスタマイズしたプログラムをご提案します。
当社の提供するさまざまなプログラムについては、こちらをご覧ください。
参考サイト
1) 外務省
G20ニューデリー首脳宣言
外務省
G20ニューデリー・サミット(概要) (2023/9/10)
California ISO
What the duck curve tells us about managing a green grid